見たかった景色を

2020年の夏、私は初めて「努力が“無”になる」ということを経験しました。
高校3年生になり、「この学校の文化祭を運営する一員になる」という夢が叶おうとしていた最中、コロナの爆発的感染拡大により文化祭の中止が決定し、計画したもの、仲間と作っていたもの全てが文字通り「消え」ました。一生懸命準備や練習を重ねていた企画の数々、寝る間を惜しんで幹部たちと最終準備を進めるはずだった直前合宿、何もかもが「計画表の項目」のまま、実現することはありませんでした。見たかった景色、するはずだった経験を実現させることなく私は大学生になりました。
きっとみなさんにもあの混乱で失われてしまった、本当は見たかった景色が何かしらあるのではないでしょうか。あれから3年近くが経ち、私たちKIFCは実際に顔を合わせて会議を重ね、参加者と電波を通してではなくその場の空気を共有しながら一緒に徽音祭を完成させようとしています。個人的な思い入れが強すぎるかもしれませんが、日々のKIFCメンバーとの「あの企画どうしよっか」という相談、後輩に向けてする自己紹介、企画書の提出、それらの瞬間私が目にしているのは高3当時の私が心から見たかった景色です。
徽音祭当日、来場者に挨拶をするその数秒、企画が成功した後輩のやり切った顔を見るそのタイミング、KIFCとしての自分が見る景色全てに対して「これが見たかったんだ」ときっと感じると思います。徽音祭に携わる全ての関係者、全ての来場者の方が今回の徽音祭でそれぞれの「見たかった景色」を見ることができますように。そして、もし私たちが作り上げた徽音祭が少しでも多くの方の目に「特別な景色」として映ることができたなら、これ以上の幸せはありません。
74th徽音祭「灯」、どうぞよろしくお願いいたします。

企画部局・企画部局長 3年